おもしろい研究テーマとは何か

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どんなテーマが面白い(良い)研究テーマと言えるのでしょうか。

 

自分が実験をやってて楽しければそれでよい?

なぜ申請書を書くのか」を思い出してください。研究のサイクルは申請書による研究費獲得→研究→論文です。自分が楽しい研究と世の中に価値がある研究は別物です。研究費を獲得するプロセスが組み込まれている以上、自己満足の研究は早晩行き詰まります。

 

本当にお金持ちで、趣味として研究を続けるのであれば自己満足の研究でも何も問題がありませんが・・・

 

「宇宙の果ての探索」とかの未解決問題? 

確かに解決できたらすごいですよね。研究テーマとしてもすごく魅力的です。しかし、他の人が解けない問題に取り組むときには何かしらの見込みが必要です。どんなに魅力的な問題でも、現在の技術では解けない問題は数多くあります。

 

私たちの時間は有限です。具体的なアイデアとそれが大丈夫そうだという証拠がない限り、そうした問題には手を出すべきではありません。

 

結局、面白いテーマってなんなの?

ずばり、

おもしろいテーマ = 価値のある研究 = 問題の価値 ☓ どれくらい理解できたか ☓ 多様性

です。

 

面白いテーマ=価値のある研究と言い換えることには異論が無いでしょう。では、それをさらに分解した「問題の価値」「どれくらい理解できたか」「多様性」とは具体的に何のことでしょうか。

 

1. 問題の価値

これはわかりやすいですよね。「宇宙の果ての探索」は問題の価値としては十分すぎるほどです。逆に、「何が問題として残っているのか」で例に挙げたような、「ニンジンは空を飛ぶか」といったテーマは問題の価値としてはゼロに近いです。

問題の価値をもう少し具体的に定義すると、

 

価値のある問題 =

未だ意見が対立しており、決着のついていない問題

これまでの考え方を根本から見直さないといけない問題

これからの研究の方向を決定づける問題

 

となります。

 

2. どれくらい理解できたか

どれぐらいのレベルで問題が解けるか(解けそうか)の達成度です。もちろん簡単な問題ならほぼ100%で解決できるでしょう。しかし、問題の価値が低いものを研究対象としても意味がありません。

 

達成度と問題の価値の両方を考えながら、テーマを選ぶ必要があります。これについては、次の「おもしろい研究テーマの見つけ方」で詳しく説明します。

 

3. 多様性

解く価値のある問題は多くの研究者が挑戦します。しかし、誰も挑戦しない問題が解く価値がないかというとそうではありません。研究テーマの流行りや、問題の価値が広く共有されていないなどの理由によって放置されている研究テーマは数多くあります。

 

そのため、審査員はなるべく研究の多様性を確保しようとする傾向にあります。具体的には、女性研究者・ひと昔前の手法を使った研究・マイナーな生物種を用いた研究などです。

 

問題の価値や解決度といった指標にくらべると政治色が強いですが、それも含めて研究です。自分の専門分野が少ない領域に飛び込んだり、ある分野では誰も挑戦していない解析を異分野を参考に挑戦してみる、など戦略的に研究の多様性を確保することは、採択の可能性を高める有効な手段です。

 

面白くないテーマを考えた方が早いかもしれない

何が問題として残っているのか」でも述べたように、最悪なのは、「わかっていないから、やる」という理由だけでテーマを選定することです。繰り返しになりますが、わかっていない問題は山ほどあるので、なぜ、あえてそれを選ぶのかに明確な理由がないといけません。

 

また、やればできることだけを研究テーマとするのも、面白みに欠けます。もちろん、こうした研究には一定の価値はあるのですが、こうしたテーマを好む研究者はそれだけをやり続けることで量産体制に入ろうとする傾向にあります。研究スタイルによる所が大きいので、一概には言えませんが、面白いか面白くないかで言えば後者でしょう。

 

似たようなものに銅鉄実験があります。有名なので詳細は説明しませんが、銅ではわかっていることを鉄でもやってみる、というやつです。これも、研究としては成立しているのかもしれませんが、どこまで価値のある問題かという点で疑問が残ります。

 

まとめになっていないまとめ

私たち研究者はすでに明らかにされた知見(飛び石)をつたって、これまでの知識に追いつき、今まさに世界の最先端にいます。目の前に新しい飛び石はありません。おもしろい研究とは、既にある飛び石と飛び石の間を埋める研究や飛び石の大きさを広げる研究ではなく、(池におちるリスクを背負ってでも)どの方向に・どれくらいの距離に次の飛び石を置けば良いのかを提案し、それを実行する研究です。

 

飛び石の間を埋める研究ももちろん大切なのですが、学振や科研費を積極的に取り行く時にメインのテーマとして選ぶべきではありません。バックアッププランの一つくらいの位置づけです。

 

飛び石を置く方向は、後の研究の方向にも大きな影響を与えます。つまり、おもしろい研究とは、次の研究の潮流を生み出せる研究のことです。NatureやScienceなどのトップジャーナルがインパクトを重要視しているのはこうした理由です。結果として飛び石を置く方向性が間違っていたかどうかは問題ではありません。多くの研究者に影響を与え、その結果、良くも悪くも研究や議論が盛んになることが重要なのです。

 

日本で研究していると、論文に発表する結果は全て正しくなくてはいけないと思うあまり、一つのことを示すのに過剰な実験を繰り返します。しかし、外国(特にアメリカ)では、報告したことが結果的には間違いであったとしても、「あの時利用可能なデータでは、あれが一番合理的な解釈だった」といい、気にしません(本心はショックなのでしょうが)。バカ丁寧で信頼のおける研究は日本の良さでもあるのですが、外国の研究者とまったく違うルールで戦っている感は否めません。これは完全に余談ですが。

 


どんな問題が面白いかについて、明確に答えをだせる人は少ないですが、安宅和人(著)「イシューからはじめよ」では、それが明確に示されており、まさに目からウロコの本です。いわゆるビジネス本ですが、著者は神経科学で米国で博士号をとっていることから、科学の問題とも絡めて書かれており、非常に理解しやすいです。考え方を学ぶ入門書としておすすめです。

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