審査員は申請内容を評価するために、(しぶしぶ)申請書を読みます。読みやすければ、文章の内容は意識せずに自然と頭に入ってきますが、読みにくい文章では読むことに必死になってしまい(あるいは読むことをあきらめ)、内容が頭に入ってきません。
ここでは、読みやすい申請書を書くための概要を説明します。
(1)適切なフォントを用いる
申請書の本文のような長い日本語の文章を読ませるには明朝体のような線の細いフォントが適当です。一方で見出しや強調部分に太めのゴシック体を用いると効果的に目をひくことができます。また、フォントの種類によって読みやすさは大きく異なりますので、美しいフォント選びは欠かせません。さらに、小さすぎないフォントサイズにすることで、読みやすさはグッと向上します。
(2)余白があれば読みやすい
学振や科研費の申請書のスペースは、書きたい分量よりも小さい場合がほとんどです。そのため、どうしても余白を減らしてギチギチに書いてしまう傾向にあります(埋められない人はまずは埋める努力をしましょう)。しかし、適切な余白は可読性を高め、審査員に内容を適切に評価してもらう効果が期待できます。こだわるべき余白は、行間・文字間・段落間・図表からの距離など多岐にわたります。
(3)日本語の作文技術を極める
私たちは、学校でほとんど作文技術を習わないまま、ここまで来てしまっています。しかし、修飾語の位置や、句読点(とくに読点)、漢字とかなの割合、文章のリズム、言葉の選び方など、読みやすい日本語の文章が兼ね備えるべき条件は意外と多いのです。このことは、逆に考えると、こうした「作文技術」を学ぶだけで読みやすい日本語の文章を書くことが可能であるということです。文学作品を書く必要はありません。ただ、シンプルで理解しやすい日本語文章を用いて、読みやすい申請書であれば良いのです。
(4)論理的に書く
論理が破綻した文章は決定的に読みにくいものです。それは、審査員が書き手の意図を推測しながら読む必要があるからです。つまり、論理的に矛盾がなければ事実かどうかは意外と気にされませんし、逆に、話のつながりがおかしいと重要な研究も正しく評価されません。論理的に書くことは自分の主張を受け入れてもらうための第一歩です。前提条件・文と文のつながりなどに気を配ることで、独りよがりの文章になるのを避けることができます。