指摘した問題のうち、本研究ではどの部分を明らかにするのか、またその時の強みや有用性は何かについて説明するための項目です。
指定されている内容
本研究計画調書は「小区分」の審査区分で審査されます。記述に当たっては、「科学研究費助成事業における審査及び評価に関する規程」(公募要領111頁参照)を参考にしてください。
本欄には、本研究の目的と方法などについて、3頁以内で記述してください。
冒頭にその概要を簡潔にまとめて記述し、本文には、(1)本研究の学術的背景、研究課題の核心をなす学術的「問い」、(2)本研究の目的および学術的独自性と創造性、(3)本研究で何をどのように、どこまで明らかにしようとするのか、について具体的かつ明確に記述してください。
本研究を研究分担者とともに行う場合は、研究代表者、研究分担者の具体的な役割を記述してください(若手には記載なし)。
書き方の解説
全体の流れ
研究背景の説明→未解決問題の提示→その問題の重要性→その一部の解明を目指す(研究目的)→ここが新しい、こんなことも可能になる→具体的にはこのようにして行う。
(2)本研究の目的および学術的独自性と創造性
目的はやりたいこと・やることですので簡単に書けるけれども、独自性と創造性がうまく書けないという人が多いように思います。その一つの原因は独自性や創造性が具体的に何を指すのかがよくわからないという問題が挙げられます。
独自性は「申請者の強み」と読み替えると分かりやすいかと思います。オリジナルの解析技術、世界最高精度の技術、世界でここでしかできない、などは分かりやすい例です。他に真似できる人がいないので独自であるというロジックはシンプルながら強力です。
しかし、これ以外の場合においても独自性をアピールすることは可能です。例えば、着眼点の独自性はアイデアが独自であることを主張するものです。「これまではXXXと考えられていたが、YYYであることを考慮すると、ZZZと考えることもできる」のような感じでしょうか。これがそれっぽい仮説&新しい仮説であれば、それはもう立派な独自性です。
他には、いち早く問題に取り組んできた先進性でしょうか。誰がやっても、そこそこは出来てしまい技術的な差はないけれども、他よりも早く(多く)問題を取り扱ってきたことによる知見の蓄積が独自であるとする方法です。
分野を変えたような人ならば、それまでのバックグラウンドを活かすことで、従来とは異なる切り口から問題に取り組むことこそが重要であるというロジックを展開することで、分野を変えたことをむしろ強みに変えることができます。
一方で創造性は「この研究によってできるようになること」という読み替えが有効です。まず、抑えておくべき王道は、本研究の完成によって研究目的のさらに先へと行くことができるという点でしょう。この研究によって研究目的が達成されるのは当然ですが、その延長においても、本研究アプローチが有効であることを主張できるのであれば、この研究は様々なメリットを生むという意味で創造的であるということになります。
もう一つの王道は、異分野などへの適用範囲の拡大です。この研究結果や研究アプローチなどを利用すれば、自分の研究分野だけでなく他の研究分野にまでその恩恵をもたらすことができると主張することで、創造的であるというアピールになります。
いずれの場合も、独自である、創造的である、とい主張だけにとどまってしまっては意味がありません。独自であり、創造的であるから本研究は重要である。というメッセージが正しく伝わるように書く必要があります。
たとえば爪楊枝の研究において削り出し精度をnmレベルに高めた技術があったとしても、確かに独自かもしれませんが、この研究が重要であるというアピールにはつながりませんので、別の戦略を考える必要がありますよね。このように本末転倒の主張とならないように気を付けてください。
書き方例
本研究はこうした学術的「問い」に答えるため、以下の2点の解明を目的とする。
・ AAAにおいてBBBにCCCが関わっていることを示すと共に、この仕組みがDDDに依存しない普遍的な制御メカニズムであることを確かめる。
・ EEEにおいて、FFFがGGGであることをHHHの観点から解明する。
これまでXXXの例はほとんどなかった。しかし、申請者の予備実験から、YYYが明らかとなっており、これまで見過ごされてきた「ZZZ」というパラメータを考慮することで、AAAの理解は大きく進むと期待される。また、本研究は申請者がこれまでに培ってきたBBBやCCCという考え方をベースとし、これまでの知見やデータを利用できる点で先進的である。さらに、申請者はDDDの側面からEEEを理解しようとしている。こうしたアプローチは、これまで主流であったFFFから、GGGへのパラダイムシフトを提示するものであり、非常に独創的である。
申請者はこれまでにもAAAやBBBなど新しい技術を開発し、利用することで研究領域を切り開いてきた実績がある。この研究を行うにあたっても、申請者は、CCCやDDDなど新しい技術を開発する。こうした新しい技術はEEEを解析可能にするだけでなく、FFF分野全体に波及効果をもたらすと期待される。
分量の目安は2ページ目の半分程度(A4 1/2枚)。メインは(3)ですので、あまり欲張って色々と書きすぎないこと。短い中に目的もアピールも詰め込まないといけないので、大変です。