① これまでの研究の背景、問題点、解決方策、研究目的、研究方法、特色と独創的な点について当該分野の重要文献を挙げて記述してください。 ② 申請者のこれまでの研究経過及び得られた結果について、問題点を含め①で記載したことと関連づけて説明してください。なお、これまでの研究結果を論文あるいは学会等で発表している場合には、申請者が担当した部分を明らかにして、それらの内容を記述してください。
研究分野の背景を説明し、そこにある問題点を指摘しましたが、こうした指摘は解決方策とセットになってこそ意味があります。
解決方策というと堅苦しいですが、要は解決のためのアイデアであり、どうやったらその問題を解決できると考えるのかです。
問題の新しさ × 解決方法の新しさ という図式ですから、それぞれ新奇か既存かで4通りの組わせがあり得ます。
問題が新しく、解決方法も新しい場合
理想的です。新しい問題に対して新しいアイデアで取り組むのですから独創性もあり、新しい方法の適用拡大による発展性もあるでしょう。ただし、審査員にとっては問題そのものも解決方法も新しいため、それが具体的にどういった問題で、どうやってそれに取り組むのかが見えにくいかもしれません。難しいことを難しく述べるのではなく、(何なら多少強引な単純化をしてでも)極力わかりやすく説明する必要があるでしょう。いかに伝えるのかがポイントになります。
また、新しい解決方策なので、この方法ならうまくいくと考える根拠が必要となります。これが無いと、「神に強く祈る」でも解決方策となってしまいます。根拠は自身の過去の研究成果や予備データ、他の分野の手法の転用・組み合わせなど(「重要文献を挙げて記述」につながる)が考えられます。
問題が新しく、解決方法は既存のものを利用する場合
全く新しい方法を開発したり利用したりするのは実際のところ大変です。もっとも多くの人のケースに当てはまるのがこのパターンです。その分野でスタンダードとなっている解決アプローチを利用しつつも、その解析の対象は新しいという場合です。
この場合、解決方策そのものに対しては問題がありませんが、新しい問題に対して既存の解決方策を適用してもよかどうかについて一言述べる必要があるでしょう。
問題は新しくないが、解決方法が新しい場合
これまで色々な人がその問題に取り組んできたが未解決のまま残されてきた問題に対して、全く新しい方法で取り組むという場合であり、うまくいけば非常に鮮やかです。
この場合は、なぜこれまでの方法では駄目だったのか(原因分析)となぜ今回の方法だとうまくいくと考えられるのかの根拠をセットで示すことで、既存の問題点をクリアした新しい解決方策の優位性を示すことが重要となります。
問題は新しくないし、解決方法も既存のものの場合
問題そのものも認識されてきたし、今回採用する解決方策もその分野でスタンダードなものである場合です。これが大問題です。
この場合に真っ先に疑問に浮かぶのが「問題も認識されており、手法もあったのになぜこの問題は未解決のまま残されているのだろうか?もしかしたら、これはそれほど重要な問題ではないのではないか?」です。
強いて理由を考えるならば、発掘調査のように優先度の高いものから終えて、今やっと今回の研究の番が回ってきたというパターンですが、ほとんどのケースでは当てはまらないように思われます。
こうしたケースでは問題選択にも解決方法にもオリジナリティがなく、「あなたが」その問題を解決しないといけない理由がどこにも存在しません。また、一見新しい技術を利用するように見えても大衆化して利用しやすくなった技術だけを利用する場合もここに当てはまります。誰もが思いつくことを誰でもできてしまう方法で取り組んでしまうとスピード競争や投資額競争になってしまいます。
もちろん、研究なんで何がどうなるかわからない、というのはその通りなのですが、申請書は夢を見せるものでもあるので、既存の問題を既存の手法でという研究に夢があるのかという話になってしまいます。