「現在までの研究状況」の欄外には、以下のように書いてあります
2.現在までの研究状況(図表を含めてもよいので、わかりやすく記述してください。様式の変更・追加は不可(以下同様))
(1) これまでの研究の背景、問題点、解決方策、研究目的、研究方法、特色と独創的な点について当該分野の重要文献を挙げて記述してください。
(2) 申請者のこれまでの研究経過及び得られた結果について、問題点を含め1で記載したことと関連づけて説明してください。なお、これまでの研究結果を論文あるいは学会等で発表している場合には、申請者が担当した部分を明らかにして、それらの内容を記述してください。
ここに書かれている項目にしたがって見出しを立てていくわけですが、実際には研究の背景、問題点・・・と1つずつ書いていくのではなく、かたまりごとに書いていくことになります。
これまでの研究の背景と問題点
ここで書くべきは5つです。
1.あなたの研究を含む分野の一般的背景と研究分野の具体的背景
2.何がわかっていて、何がわかっていないのか(未解決問題)
3.未解決問題が存在する理由(問題の解決に至っていない技術的課題、考え方の不備)
4.未解決であることの弊害またはメリット(解決の必要性) or 申請者なら解決できること(技術や情報(知見の蓄積、資料)のアドバンテージ)
5.これらの問題を解決するためのアイデアとその根拠(解決方策)
ポイント!
・「これまでの研究」とありますが、これは採択時点から見て「これまで」ということですので、執筆時点では現在やっている研究になります。
・「現在、多くのことがわかっているのだけど、XXXXがわかっていないせいで画竜点睛を欠く状態である(全体として理解ができない)」という形にもっていければ、書くべきこと2と4を一度に取り込めますが、このパターンにならない例のほうが多いです。
・ここでの未解決問題は、あなたの研究によってその一部分が解決されるように設定してください。設定した問題の全部を解決してしまうと、今後の研究につながりませんし、研究者の直感に反してしまい不自然です(そんなことあるわけがない)。問題点の一部を解決するという前提であるからこそ、あとで「研究の位置づけ」を書く欄があるのです(後述)。
・未解決問題自体はどの研究分野にも山ほど存在します。そのたくさんある問題の中から、なぜ今回の研究で取り上げる必要があるのかについての説明は必須です。「ニンジンが空をとぶかはこれまで検証されてこなかったので、今回、検証する。」や「ここに穴がないから穴を掘る」というのはナンセンスでしょう?
主に2つのパターンがあって(1)「弊害(メリット)があるから」を強調するパターン。この場合は研究方策に独自性が求められます。ちなみにメリットより弊害の方が今すぐやらなきゃいけない!というのが分かり易いので訴求力があります。メリットだけだと、人によっては「現時点で困っていないので今すぐする必要はないよね」となってしまいます。(2)「申請者なら解決できる」を強調するパターン。独自技術を持っている場合などですね。この場合は、なぜそれを解決せねばならないのかを説得力を持って説明する必要があります。また、自分で工夫したわけではなくラボで持っている技術に独自性がある場合も、その技術自体には申請者の貢献が含まれていませんので、適用方法の工夫や性能向上の工夫など何かは必要です。
・解決方策は「解決するためのアイデア」と読み替えてください。また、そのアイデアには根拠が必要です。「宇宙の果てを知る必要がある」→「光速より早く移動すれば良い」程度なら言うだけなら誰でも可能ですが、実現可能性に疑問が残ります。また、誰でもできるようなこと、「がんの原因遺伝子を知る必要がある」→「ゲノムシークエンスをする」程度だと、技術やアイデアに明確なアドバンテージがありません。もちろん、誰かが解かなければならない問題の場合にはこうした早押し競争的な問題解決のアプローチもありえますが。。。そういうのは大御所や大型プロジェクトがさらっていくことが多いでしょう。
具体例1(内容は分野外ですので、適当です)
心臓病や関節リウマチ、糖尿病などに代表される慢性疾患は、原因や経過が異なる多様な病態を含む不均一な疾患群である(一般的背景)。一部の慢性疾患には特効薬が存在するため、完全治癒が可能である。しかし、多くの疾患では依然として対処療法にとどまっており、治療効果も人によって異なるため、事前に治療計画を立てることは困難であった。こうした慢性疾患の治療を必要とする患者数は今後ますます増加すると見込まれていることから、特効薬の開発を進めるとともに、患者ごとに正確な予後予測を行い有効な治療法を選択するための明確な基準が求められている(具体的背景)。
慢性疾患の進行には時間がかかるため、これまでの○○○解析では、いつ発症に至ったかを明らかにはできていない(問題の解決に至っていない技術的課題)。そのため、疾患の直接的な原因となる分子を明らかにすることは難しく、分子標的薬の開発は遅れていた(弊害)。こうしたことから、ほとんどの慢性疾患の治療は対処療法にとどまっている。
申請者は、性疾患の進行には時間がかかるため、これまでの○○○解析では
具体例2(内容は分野外ですので、適当です)
建築学では 1990 年代に安藤忠雄、