(1)本研究の学術的背景、研究課題の核心をなす学術的「問い」

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申請書が分からないという場合、そのほとんどは、「なぜ申請者がその問題を扱いたいのかがわからない」というものです。そうした問題意識や背景を説明するための項目です。

 

申請書記載事項

本研究計画調書は「小区分」の審査区分で審査されます。記述に当たっては、「科学研究費助成事業における審査及び評価に関する規程」(公募要領111頁参照)を参考にしてください。

本欄には、本研究の目的と方法などについて、3頁以内で記述してください。

冒頭にその概要を簡潔にまとめて記述し、本文には、(1)本研究の学術的背景研究課題の核心をなす学術的「問い」、(2)本研究の目的および学術的独自性と創造性、(3)本研究で何をどのように、どこまで明らかにしようとするのか、について具体的かつ明確に記述してください。

本研究を研究分担者とともに行う場合は、研究代表者、研究分担者の具体的な役割を記述してください(若手には記載なし)。

 

書き方の解説

全体の流れ

研究背景の説明→未解決問題の提示→その問題の重要性→その一部の解明を目指す(研究目的)→ここが新しい、こんなことも可能になる→具体的にはこのようにして行う。

 

(1)本研究の学術的背景、研究課題の核心をなす学術的「問い」

『研究課題の核心をなす学術的「問い」』というあまりこなれていない日本語に、結局何を聞かれているかわからなかった人も多いのではないでしょうか。

本研究の学術的背景とは、あなた研究分野の背景であり、分野の重要性や、何がわかっているのか、現状がどのようなものなのかを説明して欲しいということです。学術的な背景なので、自分の研究をもちろん紹介するのですが、分野全体を俯瞰することが主目的です。

一方で、研究課題の核心をなす学術的「問い」とは、研究分野のそうした状況において何が問題となっているか、について自分の研究より一つ上のレベルから説明して欲しいということです。この設問の背景には、「本研究で扱う問題は、研究分野において問題と認識されている問題の一部である」という前提が隠されています。それを理解しないことにはうまく書くことができないという点で少し不親切です。

研究目的から逆算してうまい具合に核心となる「問い」を設定する必要があるのですが、あまりにも普遍的すぎると「解けるのか?」となりますし、具体的すぎると「それは分野としての問いではない」となってしまいますので、バランスが難しいところです。

迷ったら、研究課題の核心をなす学術的「問い」=自分の研究における問題点や解明すべき課題・それを明らかにする意義などを書いておけばよいでしょう。ただし、ここは解釈の問題になってしまいますが、私としては『研究課題の核心をなす学術的「問い」』なのですから、個人的な「問い」ではなく、より汎用性があり、より根源的なところを「問い」として設定するべきだと考えます。

書き方例

概日時計は24時間周期の外部環境変化に対応するための仕組みである。概日時計は、原始生命において、光合成によるエネルギー生産の最大化と細胞分裂時におけるUVによるDNA損傷の最小化を達成するため、それぞれの反応を時間的に分離する目的で発達してきたと考えられている[REF]。実際、XXXにおいて細胞分裂は夕方から夜にかけて起こるように概日時計によって制御されており、また、こうした概日リズムと細胞分裂周期のカップリングは細胞運命決定にも関わっていることが知られている[REF]。一方で、YYYの概日時計はAAAやBBBに関連して研究されてきた経緯から、概日時計による細胞運命決定の仕組みは、その存在も含めてこれまでほとんど明らかにされていない[REF]。

申請者のこれまでの研究を含めいくつかの研究から、YYYでは大部分の遺伝子が周期的な発現変動を示しており、その中には細胞運命決定に関わる遺伝子も多く含まれている[REF]。こうしたことから、YYYの細胞運命決定や細胞分裂制御においても何らかの形で概日時計が関わっているのではないかと考えられた。動物の場合、多能性幹細胞であるES細胞では時計遺伝子の概日リズムは見られず、分化するにつれ概日リズムが形成され、iPS化により再び概日リズムが失われることが知られている[REF]。YYYの幹細胞ニッチであるCCCやDDDの初期過程においても、概日リズムは見られなかった[REF]。こうしたことから、XXX・YYYを問わず、細胞運命決定と概日リズム形成は深く関係していることが示唆される。また、申請者の予備実験からも細胞運命決定における概日時計の関与が明らかとなっている[後述する 本研究の着想に至った経緯 を参照]。

そこで本研究では、研究課題の核心をなす学術的「問い」として、「多細胞生物の細胞運命決定制御に共通した制御メカニズムは存在するのか」を設定し、XXXXのXXXXという観点から、YYYを材料にして、この問題に取り組む。

細胞においてオルガネラは区画化され互いに独立して機能するが、一方で、オルガネラ同士の物理的な接触を伴うコミュニケーションが細胞の恒常性の維持に必要であると提唱されている。事実、多くのオルガネラの間に接触が見られるが、それらの接触の持つ機能に関してはまだ一部が明らかにされているだけである。

小胞体とミトコンドリアとの接触はオルガネラ同士の接触の中でももっとも目立って観察される。小胞体とミトコンドリアとの接触面においては小胞体からミトコンドリアへCa2+が流入することが知られており、その他にも、ミトコンドリアの形態の制御・脂質の合成・オートファゴソームの形成など、細胞におけるさまざまな恒常性の維持において重要な役割を果たすと提唱されてきた実際に、アルツハイマー病やパーキンソン病をはじめとする神経疾患において小胞体とミトコンドリアとの接触の異常が多く報告されている。申請者らも、これまでの研究においてXXXやYYYを明らかにしZZZであることを報告してきた。

しかし、こうした小胞体とミトコンドリアとの接触の形成あるいは維持の機構の多くは依然不明であり、どのような制御をうけているのか、細胞においてどのような機構に必須なのかといった問題が、本研究課題の核心をなす学術的「問い」として存在している。

分量としては、概要を含めて1ページ目の終わりまでで収めたい。2ページ目の冒頭から(2)本研究の目的および学術的独自性と創造性、が書きか出せるのが理想。

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