背景と課題

審査員はその分野のプロではありませんし、ましてやあなたの研究テーマに精通しているわけではありません。一方で、審査員にはその分野について詳しく知りたいというモチベーションもありません。申請書での背景は、その分野の重要性や研究計画の内容が理解できる最低限にとどめましょう。申請書は総説ではありません。

申請書 上部の注意書き

科研費:
冒頭にその概要を簡潔にまとめて記述し、本文には、(1)本研究の学術的背景、研究課題の核心をなす学術的「問い」、(2)本研究の目的および学術的独自性と創造性、(3)本研究の着想に至った経緯や、関連する国内外の研究動向と本研究の位置づけ(4)本研究で何をどのように、どこまで明らかにしようとするのか、(5)本研究の目的を達成するための準備状況、について具体的かつ明確に記述すること。

本研究を研究分担者とともに行う場合は、研究代表者、研究分担者の具体的な役割を記述してください(若手には記載なし)。

学振:
特別研究員として取り組む研究の位置づけについて、当該分野の状況や課題等の背景、並びに本研究計画の着想に至った経緯も含めて記入してください。

書き方の解説

「背景と課題」の流れ

パターン1

  1. 研究領域全体の学術的背景
  2. 本研究計画が関連する分野の学術的背景
  3. これまでの取り組み
  4. 本研究計画で扱う課題
  5. それに取り組む必要性・弊害
  6. (なぜそれに取り組めていなかったのか)
  7. 本研究で挑戦する課題・学術的「問い」

パターン2

  1. 研究領域全体の学術的背景
  2. 本研究計画が関連する分野の学術的背景
  3. 本研究計画で扱う課題
  4. (それに取り組む必要性・弊害)
  5. これまでの取り組み
  6. 本研究で挑戦する課題・学術的「問い」

研究領域全体の学術的背景(広い背景)

研究領域の概況と研究の重要性について簡単に書きます。あくまでもメインは「研究計画」の内容なので、広い背景は長々と書かないようにしてくだし。また、重要性を強調しすぎるとくどくなるので、さらりと書くことを意識すると良いでしょう。
  • ○○○は○○○療法のキードラッグとして広く使用されている。
  • ○○○は、○○○において唯一、化石エネルギーを代替できる再生可能エネルギーである。
  • がん免疫療法は、○○○を活性化することで抗腫瘍効果を発揮する。
  • ○○○や○○○など様々な原因により免疫機能が低下すると、免疫系と○○○のバランスが崩れ、○○○が発症する。
  • 深刻な○○○不足に悩む○○○では、ロボットによる自動化・省力化が急務である。
  • ○○○は、和食の文化と○○○による発酵が融合した伝統食品である。2013年に「和食」がユネスコの無形文化遺産に登録され、○○○は世界的にも知られるようになった。
  • ブレーザーは、活動銀河の中心のブラックホールから噴出される宇宙ジェットを正面から見た天体である。

本研究計画が関連する分野の学術的背景(狭い背景)

広い背景から自然な形で今回の研究に関する背景説明へとつなげます。ここも長々とは書かず、本研究計画を理解し・評価するうえで必要最低限の情報に留めるのがポイントです。審査員を教育しようと考えない!
  • ○○○とは、○○○に基づいて○○○に分類された○○○であり、○○○に○○○を付与するとともに○○○を○○○する(図1)。

これまでの取り組み

本研究のどこがどう新しいのかを示すためには、これまでに何がわかっているのか、どのような方向性での研究がなされてきたのかをはっきりさせておく必要があります。また、ここで申請者や所属研究室の実績を示すことで、申請者(ら)がこの分野で貢献してきたこと、研究遂行能力があること、を示すことができます。
  • これまでに、○○○に関わる○○○や○○○に関わる○○○について特性解析がなされてきた[引用文献]。申請者も、○○○の○○○に関わる因子を明らかにし、○○○の新たな役割を提唱してきた[引用文献]。
  • 申請者らは、○○○によって得られた○○○データの解析を高度化するために、○○○という新規手法を提案している[引用文献]。この方法では、○○○を○○○として○○○し、多次元時系列データの○○○や相関を○○○する手法である(図1)。

本研究計画で扱う課題

いきなり個別の課題を説明しても、その課題が持つ意義や重要性については伝わりません。まずは、本研究課題を含むより大きな課題が当該研究領域において重要な問題であることを示す必要があります。
  • しかし、○○○の理解が大きく進んだ一方で、○○○における○○○については、20年以上進展がなかった。
  • 近年、多くの遺伝性疾患の原因となる○○○の正常化を標的とした治療法が開発されつつあるものの、○○○症候群では原因○○○の機能を評価し創薬に利用するための有用なモデルは存在しない。

それに取り組む必要性・弊害

未解決である/誰も挑戦してこなかったこと自体は、その課題に取り組む必要性を担保するものではありません。未解決だがする価値もない問題も多くあります。また、現時点で特に困っていないようであれば、「いま」それに取り組む必然性は低くなります。
  • 一般的に、○○○では、○○○である 。しかし、どの○○○に注目するべきかについては一致した見解が存在せず、○○○の混乱の要因となっていた。

なぜそれに取り組めていなかったのか

あなたは重要だがこれまでに取り組まれていないあるいは成功していない課題に挑戦しています。しかし、そうした問題は何か難しい点があったからこそ、これまで未解決のまま残されていたと考えられます。どこが難しかったのかをあなたなりに定義しましょう。そして、それを本研究でなら解決できる(だから新しいことがわかるかもしれない)という流れに結びつけます。
  • これまでの○○○の研究は主に○○○で行われており、○○○の観点から○○○の生態を解析した研究は皆無であった。
  • ○○○学者は○○○を用いて○○○の時間変化や○○○の解析を行ってきたが、不連続な○○○から○○○を理解し、どの要因が○○○であるかを見出すことは困難であった。

本研究で挑戦する課題・学術的「問い」

とくに科研費や学振では、研究期間や予算、人員に限りがありますので、ひとつの研究計画で「本研究計画が関連する分野全体の課題」のすべてを解決することはできません。課題をいくつかの小さな課題に分割して個別に解決していくことになりますが、本研究計画では、どの部分をどのような方針で解決しようとするのかを説明します。
  • こうしたことから、原因となる○○○機能を標的とした新たな評価系の構築、および病態進行を標的とした初期病変部位の○○○の解明が新規治療薬の開発に必須であると考えられた。
  • こうしたことから、新規治療薬の開発に向けて、原因となる○○○機能を標的とした新たな評価系を構築し、病態進行を標的とした初期病変部位の○○○を解明することが、学術的な「問い」として残されていた。

書き方例

細胞においてオルガネラは区画化され互いに独立して機能しており、高度な機能分担が存在している。(研究領域全体の学術的背景)

その一方で、多くのオルガネラの間に接触が見られており、オルガネラ同士の物理的な接触を伴うコミュニケーションが細胞の恒常性の維持に必要であると提唱されている [引用文献]。なかでも、小胞体とミトコンドリアとの接触はオルガネラ同士の接触の中でももっとも目立って観察されており、接触面においては小胞体からミトコンドリアへCa2+が流入する。他にも、ミトコンドリアの形態の制御・脂質の合成・オートファゴソームの形成など、細胞におけるさまざまな恒常性の維持において重要な役割を果たしている。(本研究計画が関連する分野の学術的背景)

申請者らはこれまでの研究から、アルツハイマー病やパーキンソン病をはじめとする神経疾患において小胞体とミトコンドリアとの接触異常が多くみられることを報告してきた。さらに、別の研究から、○○○が○○○であることも報告されている[引用文献]。(これまでの取り組み)

しかし、こうした小胞体とミトコンドリアとの接触の形成あるいは維持の機構の多くは依然不明であり、どのような制御をうけているのか、細胞においてどのような機構に必須なのかは依然として不明のままである。(本研究計画が関連する分野全体の課題)

○○○と○○○の接触制御は○○○症の創薬標的として成功していることから、小胞体とミトコンドリアの接触制御もまた、いまだに特効薬が存在しないアルツハイマー病やパーキンソン病の重要な創薬標的となると考えられた。(それに取り組む必要性・弊害)

これまで、オルガネラ間の接触制御の解析は○○○を用いた解析が主流であったが、この方法では、○○○の○○○を○○○できず、○○○については十分な精度で解析することが困難であった。(なぜそれに取り組めていなかったのか)

これに対して、○○○を○○○することで、○○○せずに○○○の機能を明らかにできるかは、オルガネラ間の接触の意義とその利用を考える上で重要な学術的「問い」である。(本研究で挑戦する課題・学術的「問い」)

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