科研費や学振の申請書はすごく丁寧に何をどこに書くべきかを注意書きで教えてくれていますので、基本的にはこれに従うことになります。
審査員が評価する項目はあらかじめ決められているから
科研費や学振の申請書の注意書きに沿って書かないといけないわけではありませんが、多くの人が注意書きに示された項目を立ててその順に書いていますので、あなたもそうした方が無難です。
審査員が評価する項目は審査における評定基準等で決められていますので、何がどこに書かれているのかを明確にすることは評価されやすい申請書のための第一歩です。目的欄であれば、目的が書かれていることを想定して読み始めますし、着想の経緯であれば、着想に至った思考過程が書かれていることを想定します。何を当たり前のことをと思うかもしれませんが、聞かれていないことをダラダラと書いており、聞かれていることに対する回答がどこなのかがわかりにくい申請書はかなりあります。
科研費審査は相対評価で悪い点数をつけないといけない人が出てきますが、異なるテーマの優劣をつけるのはかなり困難です。そのため、評価項目がどこに書かれているのかわかりにくい申請書は審査員が低い評価をつける十分な理由になってしまいます。
示す順や示し方で意味や印象が大きく変わりうるから
文章構成だけでなく文章表現についても同じことが言えますが、また文章の順序や前後の流れ、書き方で与える印象が大きく異なる場合もあります。
たとえば、2020年のそごう・西武の広告は文章の順序で意味が全く異なる良い例です。
大逆転は、起こりうる。
わたしは、その言葉を信じない。
どうせ奇跡なんて起こらない。
それでも人々は無責任に言うだろう。
小さな者でも大きな相手に立ち向かえ。
誰とも違う発想や工夫を駆使して闘え。
今こそ自分を貫くときだ。
しかし、そんな考え方は馬鹿げている。
勝ち目のない勝負はあきらめるのが賢明だ。
わたしはただ、為す術もなく押し込まれる。
土俵際、もはや絶体絶命。ここまで読んでくださったあなたへ。
文章を下から上へ、一行ずつ読んでみてください。
逆転劇が始まります。
また、以下の例では、同じ事実を示しているにもかかわらず文章から受ける印象は大きく違ってきます。
地球の歴史のなかで、氷河が拡大した時期を氷期といい、氷期と氷期との間の温暖で氷河が縮小した時期を間氷期といいます。最終氷期は約1万年前に終わり、現在は間氷期に相当しています。現時点では温暖化が進行しているが…
産業革命以降、地球の二酸化炭素濃度は40%上昇し、気温は0.8℃上昇し、温暖化が進行している。
コップに水が半分も入っている。
コップに水は半分しか入っていない。
実際にはここまで極端な例はほとんどありませんが、全体としての主張と細かな部分での主張が矛盾している例は比較的よく見ます。