ここでは、これまでに指摘した問題点や、それに起因する弊害を解決するための鮮やかな解決方法(アイデア・仮説)を示します。そして、これにより「最悪の未来」が「バラ色の未来」へと変わることをアピールします。
1. 研究計画を含む広い研究領域の一般的な説明、重要性
2. 研究計画に関する狭い研究領域についての説明
3. 当該分野でこれまでどのような取り組みがなされており、その結果、何がわかっているのか
4. こうしたこれまでの当該分野における進展の中で申請者らはどこに貢献してきたか
5. こうした努力にも関わらず、未解決な点は何か
6. なぜそれは問題として残されているのか
7. その問題が解決されないと何が問題なのか、あるいは、それを解決するとどのような良いことがあるのか
8. どうすればそれを解決できると考えたのか、そのアイデアならば上手くいくと考えられる根拠は何か
9. それにより、どうなるのか
10. そのアイデアを実行する上での障害は何か
どうすればその問題を解決できると考えるのか
まず、前提を再確認しましょう。山ほどある未解決問題のうち、扱うべき問題は基本的に以下のどれかに該当する重要な(解決する価値のある)ものです。
- 当該研究分野(狭い研究分野)において、長い間、論争であったことに答えをだせる
- 当該研究分野のこれからの研究のあり方に、大きな影響がある
- 周辺関連分野(広い研究分野)において、研究の成果が利用可能である(多くの人がメリットを享受できる)
- 社会に対して大きな良い影響をもたらす
こうした重要な問題は、多くの研究者が解決しようとして狙っているので、解決すべき問題が明確であり、解決する方法も存在しているならば、すでに誰かがやっているはずです。それが、未解決のまま残されているのには理由があります。
すでに見てきたように、重要な問題であるにも関わらず未解決のまま残されている理由として考えらえるのは、
- 研究材料、資料・装置、研究方法、資金・人手などの不足により、したくてもできなかった
- その問題にどう取り組んでよいのかわからなかった
- そもそも、それが問題であると認識されていなかった
あたりです。いずれも、やっかいな問題であるからこそ、未解決であるということです。当然ですね。その問題に取り組もうとしているのですから、申請者は審査員に対して、なぜ申請者ならばその問題を解決できると考えたのかのアイデアと根拠を示す必要があります。
ポイント1:新しいアイデア・技術・予備データによる解決策を提案する
誰でもができる方法や誰もが思いつくアイデアなどだけでは「鮮やかな解決方法」として魅力的ではありません。あなたにしか思いつかなかった、新しいアイデア・手法・コンセプトが求められています。実際にはそうではないかもしれませんが、少なくとも申請書ではそう主張する必要があります。
既存の技術であっても切り口が新しいとか、組み合わせ方が新しいなどでも十分に魅力的です。研究室が独自に持っている技術から、逆算して解決できそうな問題を探すのもありでしょう。アイデアとは既存の要素の新しい組み合わせです。異分野の知見を取り込んだり、最新の知見を利用したりすることで新しいアイデアを作り上げます。「オズボーンのチェックリスト」も参考になるでしょう。問題が具体的であれば、解決策は意外と簡単に思いつくものです。
逆に、あなた(あなたの研究室)以外の人による進展を積極的にアピールするのは逆効果です。基本コンセプトがすでに示されてしまっており、それに沿うだけだと単なる銅鉄実験であり、申請者のオリジナリティについては評価は割り引かれてしまいます。
ポイント2:バラ色の未来を提示する
ポイント1で提案する方法により問題が解決されることで、どんな良いことが起こるのか(バラ色の未来)を簡単に示します。研究目的とかぶってしまう可能性も高いので、難しいようであれば必ずしも入れる必要はないかもしれませんが、この研究をすることで問題のどの部分をどのように解決しようとしているのかを明示することは審査員へのアピールという点で非常に重要です。
研究目的よりは少し遠い将来だが比較的現実的なところを書くようにしましょう。