文章の内容の推敲が終わったら、文章表現の推敲に移ります。学振や科研費に限らず、一般に審査員は限られた時間で大量の申請書を読まなくてはなりません。日本語の作文として読みやすく、審査員が理解できるようにすることが、ここでのゴールです。
短く切る
長い文章は途中で切って2つに分けます。特に1つの文に複数の内容が詰め込まれている場合は、分割した方が文の構造がわかりやすくなります。接続詞のあるところで文章を切ることが、ひとつの目安です。
長い文章の目安は80〜100字程度です。30〜50字程度が標準的な長さです。
削る
削っても文意が曖昧にならない語や読点は削ります。特に「重複」や「重ね言葉」は真っ先に削るべき対象となります。
重複
「馬から落馬」「頭痛が痛い」のような例で有名です。笑い話の中だけではなく、実際の申請書でもしばしば重複は見受けられます。
重ね言葉
同じ単語が、一つの文章もしくは近い位置に繰り返される場合です。
並べ替える・呼応させる
主部と述部,あるいは修飾語と被修飾語のように関連する語同士が隣接するように語順を整えます。修飾語の語順については修飾語を見てください。
長い文章では特に主部と述部の対応がついていない文章が見られます。慣れればすぐに気づきますが、慣れていないうちは主部と述部だけにした時に意味が取れるかを意識してチェックします。
揃える
対比や並列の関係にある語句の形式は揃えます。
正しく繋ぐ
順接関係にある内容を、「だが」のような逆説の形で繋いでいませんか?また、単純接続の「が」は逆説と理解されてしまう可能性がありますので、使わないようにします。
「そして」「また」「あるいは」「一方」「しかし」「したがって」などの接続詞は前後の意味の関係を正確に反映するように慎重に選択します。文章の内容がしっかりしていれば、接続詞はそれほど必要では無いはずです。接続詞の多用はくどい文章の原因となりますので、省略できる接続詞は削ります。
全てを「の」で繋げていませんか?
言い切る
回りくどい言い方は読み手にストレスを与えます。多少の例外には目をつぶり思い切って言い切りましょう。内容に自信が無い場合、正確に書きたいという意識が強く働き過ぎる場合、格調高く書こうとする場合などに良く見られます。
ただし、本当に推察の域をでない場合などは、その旨がわかるように正確に書く必要があります。その場合、弱い表現になってしまうのは、仕方がないことです。
否定形の表現は肯定形の表現に直しましょう。
これらは、読みやすさというよりかは、心理的な効果を狙っています。
否定文を入れる際には短い文章にする
日本語の場合「〜ではない。」と一番最後に否定語が来るので、長い文章の場合には最後にどんでん返しをくらう形になってしまいます。なるべく短い文章にすることで、文意を理解してもらいやすくします。また、適切な接続詞を加えることで、文章の内容を予測しやすくなります。
正確な表現にする・統一する
同じ内容を説明なしに別の呼び方をしていませんか?ゆらぎのある表現だけではなく、ある言葉の言い換えが多発するのも読みにくい原因となります。用語は統一しましょう。
コンピューター or コンピュータ
読書法、本の読み方、読書術 といった同じ意味の言葉を併用する
その言葉は本当に一般に使われている言葉ですか?あなたが作った言葉ではありませんか?もしくは、その言葉は正しい意味で使われていますか?いまいちど確認しましょう。
まとめる
電気を消す→消灯するの例のように、助詞を省略できるうまい単語がある場合だけでなく、短くしても本質的な意味が変わらない場合はまとめてしまいましょう。文章を短くすると共に、文の構造がわかりやすくなります。
易しくする
難解な内容は,「すなわち」などで平易な言葉で言い換えましょう。そして、そもそも、難しい内容を申請書で示さないといけないかどうかについても考えてみましょう。あなたが実際にする内容は最先端なので難しいのは当然でしょうが、それをそのまま審査員に伝えるのはあまりにも工夫がなさすぎます。
専門用語のような馴染みのない名詞の前には,「~であるA」のような解説を置きましょう。専門用語は他に適切な言い方が無いからこそ専門用語として確立しています。それでも、多少の不正確さに目を瞑ってでも、もっと簡単に言い換えられないかは常に検討してください。
経験的には難しいと言われることはあっても、簡単すぎるや内容が不正確すぎると言われることはほとんどありません。
書き直す
こうして、細かな修正をすればするほど、より本質的な文の構造の善し悪しに気づきやすくなります。文の構造・論の展開は細かな修正では直せませんので、無理だと感じたら最初から書き直す勇気を持って下さい。2回目に書く時はずっと早く、楽に、より良く書けると思います。