申請書には必ず図を入れるべきです。良い図はアイデア明快に伝えることができますし、予備データなどを具体的証拠をもって提示することができます。ここでいう図には写真・図表・イラストを含みます。
しかし、申請書の文章は推敲しても、図については無頓着な場合が多く見られます。ここでは、比較的簡単に分かりやすいイラストを描く方法を説明します。
写真
科研費の審査は白黒印刷された書類に対して行われます(科研費FAQのQ2202)。
白黒印刷で写真はかなり厳しいので、写真の内容をイラスト化した方がよいでしょう。またカラー写真の場合でも、なるべく分かりやすいものにしないと、印刷時に潰れてしまうと逆効果です。
図表
申請書は論文ではありませんので、あまり込み入った図表は不要です。入れる場合でも、極力シンプルにして、ひと目で図表の主張がわかるようなものにした方が良いでしょう。
特に論文の図表そのまま載せることは厳禁です。できるだけ、申請書用に作り直しましょう
申請書 | 投稿論文 | |
図表の詳しさ | 細かい説明不要で、図表を見ただけで言いたいことがシンプルに伝わるように | なるべく詳しく、情報を漏らさず |
字の大きさ | 小さすぎる字は読めない(読まない) | 読み込む気で図表を見るので、小さくても良い |
カラー・写真 | 白黒という制約上使えない | 積極的使う |
イラスト
一番、改善できるとすればイラストです。影やグラデーションのついたCGや美しいイラストは確かにインパクトがあるのですが、申請書には不向きです。
私は以下の2つをイラストの基本としています。
- 全てのイラストは自分の手書きであること
- 光沢感や立体感という視覚効果を利用しないフラットデザインにすること
全てのイラストを手書きにする
例えば、こんなイラストはどうでしょうか?
どこかから取ってきた綺麗な絵に、明らかにPowerPointで適当に描いた転写因子。イラストのテイストが違い過ぎてバラバラな感じがします。全てを同じクオリティ・同じテイストで描くことが難しい以上、他人が描いたものは使うべきでは使うべきではありません。
また、影やグラデーションなどは申請者が伝えたい情報ではありません。そこに注意がいってしまうと伝えるべき内容がうまく伝わらず、逆効果となってしまいます。全てを手書きのフラットデザインで描くことにしてしまえば、こうした問題は解消されます。
パワーポイントで作ったのが丸出しのイラストは避ける
いくら手書きが良いと言っても、これはあんまりです。太陽はPowerPointにもともと入っていたものですし、キリンは四角や丸を組み合わせた単純なものです。あまりにも幼稚で、これでは申請書の内容まで軽いように思われてしまいます。
影・グラデーション・枠線はつけない
パワーポイントで図形を書くとデフォルトでついてくる影・グラデーション・枠線はフラットデザインには不要です。図形を右クリックして[図形の書式設定]から[塗りつぶし]、[影]、[線]と進み設定を外しておきます。
フラットデザインのイラストの描き方
フラットデザインなら3ステップで、パワーポイントでそれなりの絵が簡単に描けます。
ステップ1:下絵の準備
下絵となる適当な写真を見つけてきて、パワーポイント上に大きく貼ります。
ステップ2:下絵のトレース
[挿入]→[図形]→[線とコネクタ]→[曲線]で曲線の線画モードに入ります。輪郭に点を打つような感覚で、曲線を描いていきます。微修正は線を右クリック[頂点の編集]から行います。
ステップ3:色をつけてグループ化
下絵の写真を消します。線の影を消し、太さを調整し、色をつけ、グループ化して、完成です。このやり方であれば、適当な元絵さえあれば簡単にフラットデザイン化できます。
もっと複雑な絵を描きたい場合
英語なら”vector”や”silhouette” + “描きたいもの”、日本語なら「シルエット 素材」や「ベクター 素材」+「描きたいもの」で検索をかけると、色々と出てきます。
例えば、「シルエット 素材 木」ならこのようなベクトル形式の図がダウンロード可能です。“free”や「無料」の検索語を加えても良いかもしれません。
こうしたシルエットのイラストはノッペリとしたフラットデザインとの相性が抜群です。科研費は白黒印刷なので、なおさら都合が良いのです。