そこそこ(60点)の科研費申請書が書ける、そこそこテンプレート(基盤C_2019)で書くべき項目の解説をしています。テンプレートはそこそこの学振申請書が書けるテンプレートからダウンロードしてください。
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- 大見出し前 1行空け(最低でも0.5行)
- 小見出し前 0.5行~0.3行
- リスト/箇条書き 0.2行~0.3行
内容
何をするのか、どうやってするのか、は多くの人がちゃんと書けている。問題は、なぜするのか、その結果何がいえるのか。
細かいところを言ってもしょうがない。漠然としすぎても伝わらない。具体的にシンプルに(矛盾していない)。
その他 見た目
- 両端揃え
- 図の幅・位置 60 mm or 70 mm もしくは横幅いっぱい
- 図の端は本文の端と揃え、複数の図の端もそろえる
- 図は3ページに2-3個くらいの割合(1ページに1つ弱)
紙面をうるさくしない
- 強調は1ページに2,3個まで
- 下線、枠囲み、太字、網掛け等を多用しない。強調は一種類
- 申請書の図は論文の図とは違う。情報を絞ってシンプルに。グレースケール
個別の解説
1.研究分野の広い背景(研究分野の重要性・一般性)を簡単に書く
2.引き続き研究分野の背景だが、問題点等を指摘し話を特定の方向へ誘導する
3.研究分野の狭い背景。今回の研究テーマに関係して何が明らかにされているのか。自分の研究または他人の研究。
4.3にも関わらず、依然として問題が残っている点は何か。この問題の一部(全部ではない)を本研究で解決するという流れになる。
5.問題解決のための背景、問題解決のヒントとなる事柄、次の6のアイデアの根拠
6.問題解決のためのアイデア(申請者の独自性)
7.具体的に何をするのか(研究全体の目的よりは細かく、具体的な研究内容よりは大きく。研究計画の項目の見出しに相当する2-3個)
8.創造性。当該研究分野にどのようなメリットがあるのか、周辺分野あるいは社会にどのようなメリットがあるのか。あまり遠すぎること(人類の幸福につながるetc)は書いても意味が無い。
9.研究分野の広い背景。1と言い方が全く同じになることは避ける。短い中で同じ言葉を繰り返しても情報量増えない。
10.研究分野において何がわかっていたのか+問題点の指摘
11.問題解決のために申請者は何をしてきたのか(アイデア編)
12.問題解決のために申請者は何をしてきたのか(実績編)
13.11,12にもかかわらず依然として残っている問題点の指摘とそのことの弊害
14.問題点を解決するアイデア。背景と何をどうするのかがわかるような図を1つ
15.アイデアの背景・根拠1
16.アイデアの背景・根拠2
17.ついでに別のメリットがあると、なお、嬉しい。付加価値。他の分野への波及効果
18.研究課題の核心。目立たせたいので、ページ冒頭になるように調整できるとベスト。
19.研究課題の核心をなす学術的「問い」だけでは漠然としているので、具体的に3つ程度ですることを示す。研究計画の大見出しと対応させる。
20.ここはケースバーケース
独自性 申請者がこの課題の取り扱いに長けている先進性・優位性(長年とりくんできて技術がある、材料や知見がある)もしくはアイデアの独自性。他の人ではなく、なぜ「あなたが」この課題に取り組むのが相応しいのか。単に「独自である」ではなく根拠をしっかりと書くこと。
創造性 この研究課題がうまくいったときのインパクト。当該分野にどのような影響を与えるのか、周辺分野にどのような影響をあたえるのか、社会にどのような影響を与えるのか。
狭い分野に対するインパクトだけだと、研究の重要性に疑問符(内輪感)、社会など広い分野に対するインパクトだけだと、実現可能性に疑問符(大風呂敷感)、なので、両方をバランス良く書く。
21.何をどうするのかを書く。何を、どうする、については書けているが「なぜそれをするのか」について書けていない人は多い。
22.どこまでするのか。どういう結果になったらこの研究がうまくいったと言えるのかについて、自分でゴールを設定する。
23.全部予定通りに進むわけはないので、うまく行かないときの対応(プランB)について書いておくと計画に厚みが出る。ただし、全てにプランBを書く必要はなく、せいぜい2箇所くらいかいておくくらいで良い。
24.研究計画2についても21-23と同様。計画は3つくらいがバランスよく、初年度に計画1、計画1とは半ば独立に計画2を提案する。計画1がコケたら何もできなくなるようだとギャンブルすぎる。
25.計画3の半分は挑戦的内容。研究期間の後半に取り掛かるイメージ。計画1および計画2の結果を一部利用しつつ進める。全体として何をどうするのかをわかりやすく示した図があると良い。
26.研究分担者がいる場合は書く。いない場合は書かなくて良い。いる場合には、研究計画のどの部分の何をやってもらうのかを書く。理想的には、完全に丸投げするのではなく一緒に進めるとすること。研究代表者はあなたなので、丸投げは良くない。
27.全く新しいことをする場合でも、いままでの研究と絡めたイントロから入る。
28.なぜその研究をする必要があると考えているのか、の背景
29.なぜその研究をする必要があるのか、なぜその研究が重要だと言えるのか
30.研究のアイデアの根拠。突然思いついたからではダメで、聞いているのは、なぜその思いついたアイデアならうまくいくと考えたのか(実現可能性があると考える根拠)。根拠は様々な側面から複数あると望ましい。
31.着想(アイデア)を短く示す。
32.準備状況。これまでの研究の背景や、研究環境と内容が被らないように気をつける。ここで聞かれていることは、この研究アイデアを実現するために何が必要で、それについてどれくらい準備していますか?という研究を進める上での本気度。
たとえば、これまで昆虫の研究をしてきた人が、急にロケット開発の申請書を書いてきたとしても準備不足だと、研究の実現可能性に疑問符がついてしまいます。その意味でも、無理矢理にでも過去の研究の発展型であるという体にしておくと書きやすい。まったく分野を変えて準備0としてしまうのは危険。あと、本を読んだ、知識はある、等の参入障壁が低いものは書いてもほとんど意味がない。なるべく予備データを示す。
33.当該分野でどういう方向性で研究が進められ、何がわかっているのか。
34.33で示した方向性に対して本研究はどういう背景であるのか。ここでは、過去の自分の研究の発展型なので、まずは過去の自分の研究と33での研究がどういう関係にあるのかを示す。今回のケースでは、「これまでとは全然方向性が違うという」という立場。他には「これまでの流れをさらに進める」「2つの流れを1つにする」「新たな潮流を生み出す」などいろいろ考えられます。
35.34の続き。本研究と33での研究の関係。違うというだけでなく、今は賛同者が増えている≒見ている方向性は間違っていないと、さらりとアピール。
36.当該領域だけでなく周辺分野にまで波及効果がある方が望ましい。これは、「創造性」パートと同じ。内容はともかく、文言が被らないようにする。申請書内でのコピペは禁止。
37.自由形式の業績リストになったので、今回の研究に深く関与する過去の成果についてはちゃんと説明する。ただし、なんでも重要という風にしてしまうと、逆に目立たないで本当に重要なもの1,2個。
38.オーソドックスな業績。論文、総説、国際学会、招待講演、メディア、特許、受賞歴等。要は、この人ならちゃんと目標を達成できそうだ(過去に達成してきた)と思ってもらえるような内容ならば何でもOK。37を拡張して書いている人もいる。
39.この1-2年で異動したならば、研究室のセットアップにお金がかかる=だから通してとは書きやすい。あとは、研究をいかにスムーズに進めるかについて人・物・環境の観点から説明しておく。「基本的には十分やれます。できます」と書く一択だが、何かを買うことでさらに研究が進むならば、「今は足りてないので十分には進められません」という書き方はあり。
40.この辺は定型に従う。同分野・類似内容で採択されたものを見るのが手っ取り早い。国レベル、機関レベル、学会レベルでのそれぞれのルールに従うことを書く。