一生懸命研究する
第一線の研究者たちは、驚くほどハードワーカーです。「いったいこの人たちは人間らしい生活をしているのであろうか」とときどき疑いたくなるほど、彼らは日々研究に没頭しており、またそのための研究環境も整えています。
どんな領域であれ、熟達者になるためには、対象となる領域で約10年間にわたり、1万時間におよぶ時間を使う必要があることが指摘されていますが、良い研究をするためにも大量の時間を費やすことが大切なのです。ただし、くれぐれも誤った方向に努力しないで下さい。
良い研究を行うためには、ハードワークが必要でしょう。
週80時間仕事をする習慣をつけて、それを楽しむことです。
秘密兵器(必殺技)を持つ
自分のいる環境や自分自身の中にある持ち味を積極的に活かすことが求められます。良い問題を見つけて、その問題に一生懸命取り組んだとしても、その人の持ち味を出さなければ、真にユニークな研究はできないでしょう。研究には競争という側面があるため、それに勝つためには、あなたの持ち味を最大限に活かす必要があります。
研究とは新しいことを発見すること、すなわち他の人よりも先に答えを見つけなければなりません。したがって、もしあなたが良い間題に焦点を当てていたとしたら、「なぜ自分にその問題が解決できるのだろうか」と問いかけることです。他の人でもこの問題が大事な間題だと気づいていますが、まだ解答を見つけていないのです。あなたは、少なくともその問題を解くための最初のステップを知っていますか?もし、あなたがすでに最終ステップまでわかつているのなら、それはあまり面白い問題ではないでしょうが、少なくとも最初に何をすべきかが見えていますか?もっと厳しい質問としては、どうしてあなたが他の誰よりも先に、その問題を解決できると思うのですか?たとえば、「あなたが研究をしている大学がその領域で世界の第一線にある」とか、「あなたの研究室が他にはあまり無いような装置を持つている」とが、「あなた自身が特別なバックグラウンドや経験を持つている」とが、とにかくあなたは常に何らかの秘密兵器(他の人よりも速くその問題を解決するための特別な手段)を持つ必要があるのです。なかには「自分は他の人より頭がいいから人より先に解決できるだろう」と考える人もいるかもしれないけど、それは危険な賭けです。
自分の先入観や仮説にとらわれない。アッと思うような予想外のデータを大事にする。
科学的発見に関する認知心理学的研究では、大きな発見が起こる際には、研究者たちが予想を裏切られるような驚くべき結果に目を向け、それを有効に利用していることが指摘されています。
人間には、自分の仮説や思い込みにとらわれて、予想外のデータが出たときにそれを無視してしまう確証バイアスと言われる傾向があることが知られていますが、予想外の結果をいかに有効に活用するかが、創造的な研究を行えるかどうかの分岐点の一つなのです。
研究の中で予想してなかったようなことが起こった時にそれに注意を向けるべきです。先入観を持って研究を行うということはとても楽なことです。私たちは皆そうしています。でも、もし予想しなかったようなことに目を向けようと試みなければ、私たちはそのプロジェクトから、あまり学ばないでしょう。
常識を裏返して考える
創造的という言葉は常識にとらわれないという意味を含んでいます。すなわち、常識を裏返して考えてみないことには、創造的なアイデアは出てこないものです。
特に、現在、主流(優勢)な理論の前提を意図的に疑ってみることにより、多くの人が知らず知らずのうちに影響されている思考の枠組みを外してみることが可能になるかもしれません。
理論的な研究で非常に大切なことは、だれが他の人が理論化した非常に重要なアイデアで、しかもあなたが「全く間違っている」と思うものを見つけることです。このやり方は、あなたの思考を明確にするためにはたいへん役に立ちます。
一般的に言って、私たちは最初から何かのアイデアや直観を持っていて、それが正しいと信じ込んでいます。そして、それを証明するための方法を考えます。
自分の中で一貫性を持った研究をする
良い芸術家は一貫したテーマやスタイルを持っていると言われます。研究においても、一貫したテーマを持って研究活動を行うことは、研究者の顔が見えるという点で重要です。さらに、一貫性を持つことにより、時間的あるいは物理的な資源を有効に使うことが可能になり、細かいところまで注意を向けることが可能になります。
研究は面白い問題を扱わなくてはなりません。それから、その研究者の一連の研究の流れの中に位置づけられなければならないのです。なかには、チヤンスがあればどんな研究でもする人もいます。たとえば、研究Aは研究Bと全く関係なく、それはまた研究Cとも全く関係ないというように研究を進めていく人もいます。しかし、それは良い考えではありません。なぜなら、あなたはバックグラウンドを知らないかもしれないし、何よりもほとんどの研究プロジェクトは最初思ったよりもずっと複雑なのです。もしあまりにたくさんのトビックに手を広げすぎると、細かいところまで十分深く考えを進めるだけの深さが得られないでしょう。だから、研究には一貫性がなければならないのです。
でも、他の人が一貫性を見つけられなくても、自分なりに一員性を見つけることもあります。大学院生は、ときどき指導教宮が言う通りの考え方をしなければならないと考える人もあります。しかし、古い世代の人たちが者えるのとは異なる形で一貫性を見つけることができるかもしれないのです。私のトピックは、私の指導教宮が考えたのとは違う形の一貫性を持つていましたので、他の人を説得するために一生懸命説明しなければなりませんでした。でも、そのことによつて、私は理論的側面を考え始めるようになったのです。
他者とアイデアを交換する
科学的コラボレーションに関する研究から、他者に自分のアイデイアを伝えたり、議論を行うといったコミュニケーションの重要性が示されています。
研究についてやりとりすることのできるグループが必要です。そのグループは批判的であることが必要です。競合仮説や実験に含まれる潜在的な問題点などをチェックするためには、厳しい批判が必要なのです。良い研究をしても、コミュニケーションに成功しなければだめでしょう。自分で勝手に何か問題を設定し、それをずっと研究し続けていくという人がいますが、そういう研究は議論に値する問題を対象としていない可能性を含んでいます。もっと魅力的な研究をするためには、学会に行つたり、人と議論したりする必要があります。
何か良いアイデアを思いつくのはとても面白いことですが、アイデアを思いつくことが、その分野を発展させるわけではないのです。発展は、良いアイデアのコミュニケーションによるのです。多くの人たちが良いアイデアを思いつくだけで満足して、それを伝えることを怠っています。あるいは、論文として書きさえすれば、読者は理解できるだろうと思っています。でも、学者の仕事のとても大きな部分というのは、どうすれば読者によく理解してもらえるのか、を考えることなのです。
多様な方法を統合する。学際的な研究をする。
ある研究分野での常識は別の分野での常識ではありません。ですので、他の分野と交流するとこれまで抱えていた問題が意外とすんなりと解決できるということが、しばしばあります。特に、学問分野が細分化し分野間の交流が薄くなっているので、逆にねらい目です。