コツ16 読みたくなくても頭に入る文章を
人間の脳はすぐにさぼるので、良い申請書の条件は「頭を使わずとも理解できる」ことです。単純化の功罪はともかく、わかりやすい主張は響きます。
全ては読んでもらい・理解してもらうための工夫であり、そこが評価のスタート地点です。#科研費のコツ pic.twitter.com/sqFi8swSfj— 科研費.com (@kakenhi_com) February 22, 2022
審査員に頭を使わせずに理解させるためには要素の数を減らす
もうほぼこれに尽きます。
背景(Introduction)、手順(Method)は単純に
背景に、総説のような詳しいものを書いてくる方がいます。審査員の仕事は申請書の評価、すなわちこれからの研究計画の評価であり、この分野について知りたいと思っているわけではないことに注意です。実際、ほとんどの審査員は分野外です。
ですので、詳しすぎる背景や詳しすぎる手順は不要であるばかりか、何が本当に大切なのかを見失わせてしまうことで申請書が正しく評価されないリスクや、貴重なスペースを無駄に使うために肝心の研究計画について十分に記載できないといった弊害が目につくようになります。
背景や手順を書く際には、この研究計画を80%理解する上で(100%を目指すのは実質不可能です)、最低限必要な要素は何かを念頭に書くことになります。
登場人物は少なく、文章の構造は単純に、主張は簡潔明瞭に
研究のアイデアや研究計画においても同様のことが言えます。複雑すぎる主張だと審査員はついていけません。実際には複雑であっても、嘘にならない程度(計画の重要性・おもしろさが損なわれない程度)に内容をデフォルメし、単純化した主張のほうが受け入れられやすいです。
申請書の目的は、自分が書きたいことを書くことではなく、自分の研究の重要さを審査員に理解してもらい、正しく評価してもらうことです。相手に伝わらなければ意味がありません。「伝える・理解してもらう」ことを第一にいろいろなことを考えてください。
ですので推敲時の思考は、「あれは書いてない、これも書かないと…」ではなく「これで伝わるかな?分野外の審査員に対しても重要性が正しく伝えられているかな?」です。
色数は少なく、フォントは美しく、装飾は控え、箇条書きは3つまで、図のサイズは揃える
これらの要素は申請書の見た目であり、内容ではありません。しかし、審査員も人間ですので、ごちゃごちゃしている申請書よりは美しく整った申請書を好みます。これは無意識の行為ですので、審査員自身も認識していないかもしれませんが、美しい申請書は確実に効果があります。
揃えられるところは揃える、要素を減らすが基本です。
「サボりがちな脳」についてもっと知りたい方
ダニエル・カーネマンのファスト&スローが読みやすく、よくまとまっています。さすがノーベル経済学賞。もう発売されてだいぶ経ちますが、いまだに何度も読み返してしまう名著です。(社会的プライミングの部分については再現性が疑われています…)
美しいレイアウト等についてもっと知りたい方
生物系の研究者が書いたデザイン本ですので、ポスターやパワーポイントなどの例が多く掲載されています。もちろん申請書にも役立ちます。内容を抜粋した無料のWeb版(伝わるデザイン)もあります。