コツ26 ”わかった気”にさせる
論文:興味のある人が読む
申請書:興味のない人が読む分野外で興味のない審査員に、あなたの研究を100%理解させることは不可能です。最低限わかって欲しいところだけを、わかりやすく。
多すぎると理解を妨げるので、情報量は減らしましょう。#科研費のコツ pic.twitter.com/0Nq6Hu2qjg— 科研費.com (@kakenhi_com) March 3, 2022
審査員に完全に理解させることは不可能
審査員は全知全能の神ではありませんので、あなたの分野のことは詳しく知りません。まずは、このことを大前提としましょう。ましてや、申請書は論文とは違って、興味をもって読むものではないので、審査員の理解に対するモチベーションも低めです。こうした前提の中で、審査員には申請書を読んでもらい、理解してもらい、高く評価してもらう必要があります。これは非常に高いハードルです。
私たちが取りうる戦略は大きく2つです。
登場人物を減らし、わかりやすいストーリーにする
たとえば『一寸法師』の主な登場人物は一寸法師、お姫様、鬼であり、とてもシンプルです。細かなところは忘れていてもだいたいの内容は言える人が多いでしょう。一方で『不思議の国のアリス』の登場人物はアリス、うさぎ、トランプの女王以外にもドードー鳥、チェシャ猫、いもむし、グリフォンなど非常に多くの登場人物があり、アリスがうさぎを追いかけて穴に落ちた以上の内容を言える人はそう多くはないでしょう。
申請書も同じで、登場人物(具体的に名前をだす要因)を減らすことはわかりやすさを追求する第一歩です。その背景には多くの要因があるでしょうが、具体名をだすものは本当に重要なものだけに絞ることは可能です。登場人物が少なければ内容もおのずとシンプルになります。
また、研究の流れもシンプルにすることが大切です。1つの研究計画に、似ている内容だが独立の2つ以上の話が混じっていたり、計画があっちにいったりこっちにいったりして全体の流れが追いにくかったりすると理解が難しくなります。
わかった気にさせる
実際には単純化できない話であっても、単純であるかのように話を展開することで見た目のわかりやすさを演出できます。分野外の審査員に対して、「90%以上のカラスは黒いが、数パーセントは白い個体がおり、さらに灰色の個体やどれにも分類できない個体も僅かだがいる。」と話をするより「カラスは黒い」と話をした方がシンプルでわかりやすいでしょう。「カラスは黒い」という主張は厳密には間違いですが、申請書の本筋とは関係がないのであればデフォルメし、わかりやすさを優先する方が得策です。