コツ64 申請書は物語
申請書にはストーリーが必要です(コツ11)。
日常から、問題が起こり、苦労しながら解決する。
この構図は小説でも同じです。
以下の海外サイトは申請書のテンプレートをわかりやすい形でまとめくれています。参考にどうぞ。https://t.co/p3liYlVSqx#科研費のコツ— 科研費.com (@kakenhi_com) April 21, 2022
申請書は物語
URL先の内容は海外での申請書のテンプレートに沿ったものですので、細かいところでは科研費や学振のフォーマットとは合いませんが、大筋では同じことを言っています。
このテンプレートは、根本的には「英雄の物語」であり、正当性、緊急性、実現可能性という3つについて説明するためのテンプレートです。
広い背景
最初のステップは、あなたのプロジェクトが関連する、広く関心を持たれている一般的なトピックは何かを特定することです。これは、あなたの両親や飛行機でたまたま隣に座った人に向けて説明しても、誰もが「ああ、そうだ、これは重要なトピックだ」と言うようなトピックです。わかりやすい例としては、移民問題、持続可能なエネルギー、癌の治療、SNSなど新しいコミュニケーション方法の台頭、環境破壊、地球規模の気候変動などです。
もしあなたが、これらの緊急性の高いテーマを扱っているのであれば、一般的なトピックを見つけることはたやすいでしょう。しかし、難解なテーマや小さな分野(例えば、中世フランス文学など)を扱っていても、絶望する必要はありません。時事問題や現在進行形の課題である必要はないのです。ただ、そうであったとしても、あなたの分野にふさわしい、できるだけ広い関連性や関心を持つトピックの一部としてそこに加わる方法を見つける必要があります。
たとえ、あなたの申請書が主にニッチ分野やその近くの人たちに向けて書いているものだとしても、自分の申請書の書き出しをニッチ分野から始めてはいけません。あなたは常に、自分の研究がより広い重要性や関心を持つ研究分野の一部であることを示す必要があります。
なぜなら、あなたの申請書は分野外の審査員を興奮させなければならないからです。さまざまな分野の専門家である審査員は、必ずしもあなたの研究分野における狭い議論に興味を持つ人ばかりではないでしょう。審査員は、個々の研究内容以上に、あなたの仕事と知的・学問的ビジョンが、幅広く、広範で、包括的なものであるかどうかを知りたがっているのです。
この分野で何がわかっているのか
トピックを設定したら、次にこのトピックを扱った文献を自分の分野または周辺量良いから2つ程度選び、何が言われているのかを簡単にレビューします。
例えば、あなたが人類学者で、ニューヨーク市のハイチ人コミュニティについて研究しているのであれば、まず、アメリカにおける移民に関する幅広い議論を指摘することになります。そして、「多くの分野の学者がこの重要な問題に取り組んできた」と書くのです。
こうした簡単な研究分野の現状のまとめは手短かに行い、総説のように詳細である必要はありません。なぜなら、これはあくまでも、自分の研究分野の重要性を説明するための「呼び水」であり、本研究計画が過去の知見にもとづいて立てられていることを証明するための一種の手続き的な行為だからです。
問題点の指摘
そして、あなたの「しかし、」で研究提案の核心が始まります。
この場合のXXXXXXとは、この大きなテーマを正確に理解するために最も必要でありながら、これまで誰も研究したことがないものについてのあなたの見解です。別の言い方だと、あなたの研究やあなたのアイデアによって明らかとなった、広い分野における課題を解決したり、正確に理解したりするために不可欠であることは何か?ということです。
このことから、GAP IN KNOWLEDGE(知見の欠如)が見えてきます。
しかし、今日まで、ブラックパワー運動における知的・思想的リーダーとしてのアフリカ系アメリカ人女性の中心的な役割を徹底的に検証した研究はほとんどない。
ここは論文のアブストラクトで言うところのの”However, “から始まる1文に相当します。こうしたHowever Sentenceは、他の学者の失敗に対する攻撃や過剰なレトリックなしで書かれていることに注目してください。これまでの知見と必要となる知見との間にあるギャップを中立的に観察し記載するだけで十分なのです。
緊急性(弊害)の提示
どんなに重要な問題であっても、今すぐ解決しなくても良い問題は後回しになります(研究する必要性が低下する)。逆に言えば、緊急性を提示することができれば、その研究を採択する理由が上がります。
このようなことを明らかにしないままだと、どのような危険があるのでしょうか?
解決方策の提示
さて、ここでヒーローの登場です。あなたの研究は、ヒーロとして、XXXXXXの真の意義についての壊滅的な無知から私たちを救うのです。
研究内容・研究計画
この後は具体的な、研究の方法と計画(論点)についての説明になります。
これは、審査員の心理状態を考慮に入れていないため、間違いです。審査員は、何百もの提案書に目を通しているのです。査読者は疲れていて、気が散っているのです。最初のページでプロジェクトの正当性と緊急性が即座に確立されなければ、その提案は見過ごされるでしょう。
提案書の残りの部分では、合理的でよく考え抜かれた学問の方法とスケジュールに従って、そのプロジェクトが実現可能なものであることを立証する証拠を提示します。つまり、そのプロジェクトが助成金やフェローシップの期間中に、そしてそのリソースを使用して完成させることが可能であることを立証するのです。
これによって何がわかるか
最後に、「STRONG CONCLUSION(強い結論)」を書かなければ終わりません。一文でもあれば十分ですが、絶対に書きましょう。
この結論は、本書のバラバラな要素をまとめ、読者をこのテーマの緊急性に立ち返らせるものです。