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#科研費のコツ77 まずい申請書の4パターン

扱う問題に重要性がないパターン

研究は未解決の問題に取り組む行為ですので、どんなにくだらない問題(私の家の庭石の産地、青い目玉焼きの作り方…)であってもそれらを真面目に研究するのであれば、それもたしかに研究と呼べるでしょう。

しかし、世の中には山ほど未解決問題があり、それに費やせる研究費・労力・時間は有限です。そうした中においては、なるべく価値の高いものから研究する必要があります。

研究の価値は「解決度合い」x「問題の重要性」で決まりますので、解決できそうな問題の中からなるべく重要な問題を選ぶ必要があります。

ここでいう重要性とは
1.これからの研究の方向性を大きく変えうるもの(同分野の研究者のこれからに大きく影響する)
2.長年議論になっていた問題に答えをだすもの(同上)
3.社会に良い影響をあたえるもの(多くの人に良い影響が及ぶ)

など、多くの人がその成果を享受できるものです。これらに該当しない重要度が低い研究を書いてしまうと「他に重要度の高い未解決問題があるなかで、なぜ、いま、その問題を扱わねばならないのか」についてうまく説明できなくなってしまいます。

着想に根拠がないパターン

着想(アイデア)に根拠がないパターンには大きく2つあります。

1.実現するための具体的なアイデアがないパターン

たとえば、

宇宙の果てはどうなっているかは地球からは観察不可能なので、直接宇宙の果てに行けば良いと考えた

あるいはもう少し具体的に

宇宙の果てに行くために、ワープ航法を実現することが必須であると考えた

と書くことはできますが、これを実現するための具体的な手法を提示できるひとはいないでしょう。いくら重要な問題とそれを解決するためのアイデアであったとしても、そのアイデアを実現するための方法を提示できないのであれば、「解決できもしないのに、なぜその問題を扱うのか」と聞かれてしまい、うまくいきません。まさに絵に描いた餅です。

かといって、誰しもが解決できる問題を扱っても問題の重要度は低いままなので、他の人はできないが、自分ならギリギリ解決できる問題を見極める必要があります。

2.着想の経緯が不明確なパターン

着想の経緯を書く際の笑い話として、「シャワーを浴びていたら思いついた」「散歩をしていたら思いついた」というものがあります。湯川秀樹の中間子理論もベッドでコーヒーを飲んでいたら思いついたという話をどこかで読んだこともあります。

しかし、もちろん、こういうことを聞かれているのではありません。いくらベッドでコーヒーを飲んでも他の人は何も思いつきません。こぼしてシミを作るのがせいぜいです。ここで聞かれているのは「なぜそのアイデアならうまくいくと考えたのか」の具体的な根拠です。

あることを解決するためのアイデア自体はうまくいかなさそうなものも含めればいくつも考えることができます。申請者はその中でもっともうまく行きそうなものを1つあるいは2つ3つ試そうとしているわけですが、他のアイデアと比較してなぜそのアイデアは優れていると考えているのでしょうか?

XXXによれば、XXXであることがわかっているので、類似の性質を持つYYYでもXXXできると考えた。

とか

申請者の予備実験からXXXであることを明らかにしているので、これを発展させればXXXも実現できると考えた。

のように何か根拠があれば、他のアイデアよりもうまく行きそうであることを説得しやすいでしょうし、それを優先的に試すのは合理的です。予備データがあると強いのは、少なくともアイデアの方向性は間違っていないことを示せるからであり、着想の経緯に合理性を与えることができるからです。予備データがない場合は、既存のアイデアの転用や結合(オズボーンのチェックリスト)から着想の経緯を補強する必要があります。

着想・計画がくだらないパターン

扱う問題に対して実際の研究計画が伴っていない場合は、最初の期待が大きかっただけにすごくがっかりしてしまう最悪のパターンのひとつです。

1.計画がくだらないパターン

ある実験や調査をして何がどうなれば成功とするのかがあいまいであったり、それらが最大限うまくいったとしても研究目的を達成できそうにない場合などです。

単純に研究計画が甘い場合も多いですが、おそらく経験不足から研究をまとめきるところまでを考えられていない場合もあるように思います。

  • この研究計画の内容が全てがうまくいったとして、具体的にどんな結果が得られると予想しているのか。そこから何が主張できるのか。
  • 何がどの程度以上であれば、この研究は成功したと言えるのか(研究の成否の判断基準はどこにあるのか)

などを具体的に思い浮かべながら書くようにすると、くだらない計画を立てることは減ると思います。あとは、自分の研究に近い内容で一定水準以上の良い論文を参考にして、ある主張をしたい場合にどのようなデータがあれば良いのかを参考にするのも有効です。

2.研究のゴールが遠すぎるパターン

これは厳密には、研究計画がくだらないというわけではないのですが、目的と計画の不一致という意味では同じカテゴリです。研究の重要性をアピールしやすい臨床・看護系の方はこのパターンが多い印象です。

扱う問題や研究目的は大きいほどよい、というわけではありません。3年とか5年とか決まった範囲で達成できることを提案し、それに至る道筋を書く必要があります。

たとえば、研究目的に「がんの撲滅」「革新的な新規薬の開発」を書き、研究がもっともうまくいったとしても、期間内にはおそらく研究目的を達成できないでしょう。期間内に達成できる「がん治療のための新戦略の確立」とか「候補化合物の作用機序の解明」あたりを目標にしないと、計画との対応はつきません。

研究計画があいまいなパターン

アメリカの学者レビットの著書『マーケティング発想法』(1968年)で紹介された有名な言葉に

ドリルを買いにきた人が欲しいのはドリルではなく『穴』である

というものがあります。

しかし、研究計画にはドリルのスペックに相当する、研究材料や研究手法、穴の開け方に相当する研究手順が書かれがちです。たとえば

本研究では、材料としてXXX社から購入したXXXマウスを用いる。マウスは2週間XXXの環境で飼育し、その後、XXXをXXXmg投与し、XXXを採取し、XXX法(22℃, XXXrpm,…)でXXXを検出する。(おわり)

のような研究計画を書く方がおおいですが、これでは研究計画が良いか悪いかを評価できません。顧客(審査員)が知りたいのは何を使ってどうやって穴をあけるかだけではなく、

  • なぜそこに穴を開けねばならないのか
  • どれくらいの深さの穴を開けられたら成功とみなすのか
  • 穴を開けることで研究目的のどの部分が達成されることになるのか
  • 穴を開けられる見込みはどれくらいあるのか
  • 仮にいまの方法で開けられない場合はどうするつもりか(穴が開けられるならどの方法でもよい)

などであり、圧倒的に情報が少ないことがわかるでしょう。

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